欲望の迷宮
『欲望の迷宮』 プロローグ:彼女の身体は量子場 人間の欲望って、直線的でも単純でもない。ましてや、道徳の物差しで簡単に割り切れるもんじゃない。 特に、女の性欲は。 それはまるで――量子場。 この場では、すべてが「ありうる状態」で共存する。彼女は支配されたい少女でありながら、すべてを支配する女王でもある。昼は冷静と秩序の仮面をかぶり、夜は剥き出しの自分に引き裂かれたいと願う。彼女の絶頂は、ただの肉体のぶつかり合いじゃなく、場の揺らぎ、役割のスイッチ、言葉の刺突、物語のうねりから生まれる。 この小説は、エロ小説じゃない。欲望の場の観測記録だ。 各章は、ある「共振パターン」の実験。 ヒロインたちは、引き起こされた場の状態そのもの。 絶頂は、テクニックの話じゃない。彼女の波動関数が「真実」に収束する瞬間だ。 彼女はもう抑え込まない。 「欲しくない」と嘘をつかない。 見られること、火をつけられること、理解されること、飲み込まれることを、彼女は自分に許し始める。 これは女の欲望の量子探求であり、現代の親密な関係に投げかける挑戦状だ。 第1章:恥の鏡 ――東京 夜の歌舞伎町は、ネオンの光が濡れたアスファルトに滲み、夢と欲望が絡み合う迷宮になる。白も黒もない、ただ欲望のグラデーションだけが広がる。 麻由はクラブ「MIRROR」の前に立っていた。露出は控えめだけど身体のラインを際立たせる黒のドレス、細いヒールが地面を刻むリズム。初めて足を踏み入れる場所。お金でも愛でもなく、彼女自身も認めたくない衝動に突き動かされて。 「いらっしゃい、プリンセス。」ドアの向こうでホストが囁く。まるで彼女が常連みたいに。 「MIRROR」は普通のクラブじゃない。ルールはシンプルで残酷だ。入る者は特殊な片面鏡に向かい、昼間の自分なら絶対に口にしない、夜だけに許される欲望を告白する。 薄暗いブースに座ると、鏡が彼女をじっと見つめる。それはただの鏡じゃない。表情や声の微妙な揺れを捉え、潜在意識の声を映す装置らしい。 「名前は?」 「麻由。」 「鏡に教えて。最後にイった理由は?」 一瞬、席を立とうとした。でもその鏡には、まるで魔法のような引力がある。本音を吐きたくなる。 彼女は小さく呟いた。「恥。」 その瞬間、鏡の中の彼女の目が光った。知らないのに、どこか見覚えのある光。覗かれることで震え、恥の中で...