組織文化の理論構築
理論の構築は組織研究の重要な課題の一つである.ほとんどの組織論者は伝統の科学理念の影響をうけて, 「内部構造の一貫性理論」(internally consistent theories)を偏好している(Poole and Van de Ven,1989:562).もし理論の中の理論仮定,解釈,あるいは結論が対立(opposition)または矛盾(contradiction)を含まれると,それはよい理論と思われない.研究者は分析の範囲や内容を注意深く限定し,内的一貫性に適合せねならないのである.しかし,このような理論構築上の厳密さと首尾一貫性(rigor and coherence)は必ずしもよい理論に導くとは限らない(Archer,1982;Bartunek,1984).R.Emerson は指摘したように,「愚かな一貫性は偏狭な識見の係累である」(A foolish consistency is the hobgoblin of little minds, Poole and Van de Ven,1989).組織研究の中で断続な論証や互斥なテーマの多いは無視,拒否されれば,組織理論の発展上の重要な源泉をも失うことになる.最近の組織理論と経営学説の進展は,人間や社会組織のパラドックス現象(paradox)を解釈する方法の必要性が認識された(Cameron,1986).組織研究者は多元的な組織現象を包括的に説明するのに,「内的一貫性」の限界が明らかである.
伝統の科学原則について,よい理論とは「有限の範囲とかなり正確な図像」(limmited and fairly precise picture)の基礎に立っている.その内容はすべて包含することではない.さもなければ,「精約基準」(parsimony criterion)に違反することになるからである(Pfeffer,
1982).研究範囲および条件の叙述は,すなわち,表現制限とする方法の一つである.理論家は理論を構築するために,慎んで仮説や解釈の原理・原則を規約しなければならない.このような規約はその理論が探究される範囲をも示唆している.故に,理論はつねに論者の視野を制限するが,このような制限を了解すれば,それは伝統な理論構築上のよい原則であると言えよう.その上,論者は理論のシステム性と実証性を求めるために,どうにかして理論を補完し,且つ検証する.こうして,論者の判断は自分の理論に引っぱられることになる (Glick,1985,1988).
論者はシステム性と実証性の要求に適合するために,その理論を中心にして,不足を満たす,測定の技術問題を解決し,理論を検証しながら修正する (theory-trimming),最後,学界の批判と挑戦を応じなければならない.言い換えれば,論者の判断は,自分の理論に縛られ易いのである.論者はその理論範囲外の諸次元は,すべて「訓練の不能」(trained incapacity)のため,深く探究することができないのである.このような内的一貫性は高ければ高いほど,理論は"完璧"(精緻化)に接近することになる(伝統の科学基準によれば),しかし,かわりに理論が描写したい多面な事象とも遠退いてしまった (Poole and Van de Ven,1989; Quinn and Cameron,1988).
このような理論構築上の難局は,つぎの方法で解決することができると提案された.つまり,諸理論間の緊張と対立 (tensions and oppositions)を整理することによって,統合的な理論構築は可能である(Starbuck,1981,1983;Tushman and Romaneili,1985).論者は意図的にそして粘り強く,理論の中の矛盾やパラドックスを考察し,検討する.決して消極的に「理論的分岐」(theoretical disagreements)に片付けてはいけない.理論は個別な全体を見なすではなく,諸種の理論を配列して,多元な観点から分析,比較し,新しい発見を心当てにすべきである.したがって,どんな単一理論でも,最後の真理ではなく,それは,多元的組織事象の交替的な断面である.論者はその交替的な断面の間で存在するパラドックスを整合できれば,統一理論の構築や実務の発展にも莫大な助力と思われる.
組織理論の構築について,諸社会パラドックス(social paradoxs)は早くも論者に確認された (Burrell and Morgan,1979;Pfeffer,1982;Quinn and Cameron,1988;Astley and Van de Ven,1983;Poole and Van de Ven,1989 ).これらのパラドックスは次である.
(1) 組織行動は構造決定(structural determination)の関数であるか,あるいは,意図的行為(purposive action)の産物であるか,そして,両者はどう調和するか. (Burrell and Morgan,1979)
(2) 組織文化(organizational culture)と組織風土 (organizational climate)は個別な認知の総合であるか,あるいは,マクロ・システムの素質 (nature)であるか.(Glick,1985;James,Joyce,and Slocum,1988)
(3) 社会組織は厳密に言うと,安定な必然秩序(stable orders)であるか,あるいは,変動する偶然現象(changing emergents) であるか. (Burrell and Morgan,1979; Pfeffer,1982;Weick,1979)
(4) 組織はグループの中の個人的な存在の確認であるか,あるいは,メンバーの間で集団行動的特質を確立しなければならないのか,そして,両者はどう取捨するのか.
上述の諸パラドックスの諸側面は,違った組織論者によって,それぞれ検討されたが,各学説の間で,競争は多い,対話は少ないのが現実である.それゆえに理論破片(theoretical fragmentation)現象になるのである(Astley and Van de Ven,1983).したがって,組織理論の発展は,もっと包括的な「メタ理論のフレムワク」(meta-theoretical framework)が必要とする.つまり,各学説のあいだのパラドックスを弁証しながら,広い視野から,多元な組織理論を統一的に説明することである.
実務の観点からも,組織の新入メンバーは短い期間内,仕事上や組織生活上,組織的矛盾面は透して見ることができないので, うまく対応することは難しくなる.あやまちを犯さないため,規範に従って行動するのが通常である.しかし,組織の中にはすべての問題は規則によって解決できるわけではない,逆に規則に違反することがより有効である場合もありうるからである.表面上に見れば,そのような能力は,一種の直覚と考えられるが,実際上,それは組織内の規則と組織構造と密接に関連している(Quinn, 1988:25-26).なぜなら,組織の規則や構造を深く理解したからこそ,組織の硬直性をこえて柔軟に運営することが可能になるである.組織のメンバーは組織内のパラドックスをうまく処理するために,長く組織の中に浸透しつつも,人間の思考習慣を克服しなければならない.人間行動の本質と関連を有する「分離的な思考方式」(schismogenic think-ing)の特徴は「二者択一の判断」(either-or judgment)である.つまり,ある種の観点は是であれば,対立的な観点は必ず否である.例えば,X理論は認めれば,Y理論は拒否しなければならない.両者は同時に成立することはできないのである.その考え方は,人間の内的一貫性と秩序 (internal consistency and order)を求める本質に根源するからである. ( Frost ,1985:316;Quinn,1988:27-28). 変化が多い複雑な組織あるいは社会の中,矛盾なパラドックス現象に対応するため,われわれは余裕のある思考方法が必要である.このパラドックスや矛盾を融合する思考方法は「兼ね合い思考」 (Janusianthinking)
というのである (Frost,1985:317,Quinn,1988:20).
組織論への認知科学的アプローチとしての「価値競合アプローチ」(Competing Values Approach,CVA)は,最近それが脚光をあびている.このアプローチの象徴的な意義とは,組織文化と組織の有効性 (organiza-
tional effectiveness)との可能な一致(congruence)を探究する際,2つ明らかに矛盾する概念を共に思考の枠組みに組み込まれていると同時に両方とも排斥しない方法が取り上げている.つまり,それは広範囲な組織観から出発して,二分法的な思考方式を超えたからである.
伝統の科学原則について,よい理論とは「有限の範囲とかなり正確な図像」(limmited and fairly precise picture)の基礎に立っている.その内容はすべて包含することではない.さもなければ,「精約基準」(parsimony criterion)に違反することになるからである(Pfeffer,
1982).研究範囲および条件の叙述は,すなわち,表現制限とする方法の一つである.理論家は理論を構築するために,慎んで仮説や解釈の原理・原則を規約しなければならない.このような規約はその理論が探究される範囲をも示唆している.故に,理論はつねに論者の視野を制限するが,このような制限を了解すれば,それは伝統な理論構築上のよい原則であると言えよう.その上,論者は理論のシステム性と実証性を求めるために,どうにかして理論を補完し,且つ検証する.こうして,論者の判断は自分の理論に引っぱられることになる (Glick,1985,1988).
論者はシステム性と実証性の要求に適合するために,その理論を中心にして,不足を満たす,測定の技術問題を解決し,理論を検証しながら修正する (theory-trimming),最後,学界の批判と挑戦を応じなければならない.言い換えれば,論者の判断は,自分の理論に縛られ易いのである.論者はその理論範囲外の諸次元は,すべて「訓練の不能」(trained incapacity)のため,深く探究することができないのである.このような内的一貫性は高ければ高いほど,理論は"完璧"(精緻化)に接近することになる(伝統の科学基準によれば),しかし,かわりに理論が描写したい多面な事象とも遠退いてしまった (Poole and Van de Ven,1989; Quinn and Cameron,1988).
このような理論構築上の難局は,つぎの方法で解決することができると提案された.つまり,諸理論間の緊張と対立 (tensions and oppositions)を整理することによって,統合的な理論構築は可能である(Starbuck,1981,1983;Tushman and Romaneili,1985).論者は意図的にそして粘り強く,理論の中の矛盾やパラドックスを考察し,検討する.決して消極的に「理論的分岐」(theoretical disagreements)に片付けてはいけない.理論は個別な全体を見なすではなく,諸種の理論を配列して,多元な観点から分析,比較し,新しい発見を心当てにすべきである.したがって,どんな単一理論でも,最後の真理ではなく,それは,多元的組織事象の交替的な断面である.論者はその交替的な断面の間で存在するパラドックスを整合できれば,統一理論の構築や実務の発展にも莫大な助力と思われる.
組織理論の構築について,諸社会パラドックス(social paradoxs)は早くも論者に確認された (Burrell and Morgan,1979;Pfeffer,1982;Quinn and Cameron,1988;Astley and Van de Ven,1983;Poole and Van de Ven,1989 ).これらのパラドックスは次である.
(1) 組織行動は構造決定(structural determination)の関数であるか,あるいは,意図的行為(purposive action)の産物であるか,そして,両者はどう調和するか. (Burrell and Morgan,1979)
(2) 組織文化(organizational culture)と組織風土 (organizational climate)は個別な認知の総合であるか,あるいは,マクロ・システムの素質 (nature)であるか.(Glick,1985;James,Joyce,and Slocum,1988)
(3) 社会組織は厳密に言うと,安定な必然秩序(stable orders)であるか,あるいは,変動する偶然現象(changing emergents) であるか. (Burrell and Morgan,1979; Pfeffer,1982;Weick,1979)
(4) 組織はグループの中の個人的な存在の確認であるか,あるいは,メンバーの間で集団行動的特質を確立しなければならないのか,そして,両者はどう取捨するのか.
上述の諸パラドックスの諸側面は,違った組織論者によって,それぞれ検討されたが,各学説の間で,競争は多い,対話は少ないのが現実である.それゆえに理論破片(theoretical fragmentation)現象になるのである(Astley and Van de Ven,1983).したがって,組織理論の発展は,もっと包括的な「メタ理論のフレムワク」(meta-theoretical framework)が必要とする.つまり,各学説のあいだのパラドックスを弁証しながら,広い視野から,多元な組織理論を統一的に説明することである.
実務の観点からも,組織の新入メンバーは短い期間内,仕事上や組織生活上,組織的矛盾面は透して見ることができないので, うまく対応することは難しくなる.あやまちを犯さないため,規範に従って行動するのが通常である.しかし,組織の中にはすべての問題は規則によって解決できるわけではない,逆に規則に違反することがより有効である場合もありうるからである.表面上に見れば,そのような能力は,一種の直覚と考えられるが,実際上,それは組織内の規則と組織構造と密接に関連している(Quinn, 1988:25-26).なぜなら,組織の規則や構造を深く理解したからこそ,組織の硬直性をこえて柔軟に運営することが可能になるである.組織のメンバーは組織内のパラドックスをうまく処理するために,長く組織の中に浸透しつつも,人間の思考習慣を克服しなければならない.人間行動の本質と関連を有する「分離的な思考方式」(schismogenic think-ing)の特徴は「二者択一の判断」(either-or judgment)である.つまり,ある種の観点は是であれば,対立的な観点は必ず否である.例えば,X理論は認めれば,Y理論は拒否しなければならない.両者は同時に成立することはできないのである.その考え方は,人間の内的一貫性と秩序 (internal consistency and order)を求める本質に根源するからである. ( Frost ,1985:316;Quinn,1988:27-28). 変化が多い複雑な組織あるいは社会の中,矛盾なパラドックス現象に対応するため,われわれは余裕のある思考方法が必要である.このパラドックスや矛盾を融合する思考方法は「兼ね合い思考」 (Janusianthinking)
というのである (Frost,1985:317,Quinn,1988:20).
組織論への認知科学的アプローチとしての「価値競合アプローチ」(Competing Values Approach,CVA)は,最近それが脚光をあびている.このアプローチの象徴的な意義とは,組織文化と組織の有効性 (organiza-
tional effectiveness)との可能な一致(congruence)を探究する際,2つ明らかに矛盾する概念を共に思考の枠組みに組み込まれていると同時に両方とも排斥しない方法が取り上げている.つまり,それは広範囲な組織観から出発して,二分法的な思考方式を超えたからである.
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