戦略決定

組織における広義の意思決定過程には,課題の明確化(決定の必要性その他の背景の理解,方向づけ),案(選択肢)の探索また創出,案の比較評価または修正,決定に必要な合意の調達,所定の決定手続の履行が含まれる. 狭義の決定過程すなわち上記のうち最後の過程(決定の手続ないし方式)にはさまざまなものがある.
Davis,J.H.(1973) は,所与の選択肢に対する成員個々人の選好が,集団の決定にどのように変換されていくかを研究する一つの用具として社会的決定方式の理論(Social decision scheme theory)を提唱し,多数決,相対多数決,比例モデル,等確率モデル,ロージ=ソロモン・モデル(正しい意見が説得力をもつことを前提としたモデル)などほか,陪審員会議に最もよく適合する特殊なモデルなどについて検討している. 成功の確率は低いが成功すっれば大きな利得がえられる(と同時に,大きな損失を招く失敗の確率が高い)選択肢から成功の確率は高いが成功時の利得が小さい選択肢まで複数の選択肢があって,その中から一つを選ぶ決定は,リスクを含む決定とよばれるが,1960年代の初めにリスクを含む決定と極化 (polarization)現象という実験結果が報告され,いわゆる「冒険的移行」(risky shift)現象として注目された.(Pruitt,D.G.,1971)
組織はオープン・システムとして,資源の希少性およびさまざまの不確実性が存する状況下にあって,環境とのさまざまな相互作用ないしさまざまな関係をとり結び,自らの存続を維持していくことになる.そのような意味で,組織の環境適応や組織の環境操作は,組織の存続をはかるうえで無視することのできない過程だということができよう.また,各主体間でどのような政治的かけひきが行われるのか,その具体的な戦略は何かといった,いわゆるバーゲニングに関する問題などがある.それは,「戦略決定が合理的に上位目標(いっそう包括的目標)を達成するための計画ではなく,自らの個人的目標を達成しようとする個人間のバーゲニングの結果としてとらえること」である.(Allison,G.T.,1971)
 こうして,文化,政治的構造,戦略との関係において政治策略は文化を創造し,文化は特定の政治行動のタイプを正当化するのに役立つ,文化と政治との関係が政治的側面を見出すことができる.(Riley,P.,ASQ,1983,3,414-37) つまり,戦略決定は,外部圧力(特に,重要な外部勢力)に対する反応が戦略決定への制約となる.そして,内部の政治的構造(power)は外部の圧力を反映している.組織文化とパワーと相互関連される(C.R.Schwenk,1988).
以上のことから,Schwenk は戦略決定を改善するため3つのモデルにもとづいて,処方せんを提供してる.
Model 1 (合理モデル) 意思決定者の認知プロセスが重要であ
る. 意思決定者の戦略問題の理解や認知プロセスを改善することが戦略支援の目標である.
Model 2 (組織プロセスモデル) 決定に至る組織プロセスを改善するた
めの支援, データ分析の周到さ・決定段階の包括性など.
Model 3 (ポリティカルモデル) 政治的基準が意思決定の質を評価する
のに使われる.
認知,組織,政治な要因は,いっしょになって,特定の戦略志向を支援し,それを変化するのはきわめてむずかしいのである.したがって,彼は,構造化されたコンフリクト(Structured Conflict)が多様性とコンセンサスがないことが,環境の知覚や意思決定の質を改善すると考え,利害関係者の政治的利害が認知プロセス・理解を改善するために使われる組織プロセスであるはず, D.A.(Decision Aids)は意思決定者間の違いが明確に定義され,構造化される方法の必要性が指摘した.
 明らかに,時間の圧迫,経営者の経歴(過去の経験),組織の文化,構造(管理,能力など)といった内部要因は経営者の状況(circumstances)解釈(環境からのあいまいな情報を取り扱う能力)に影響を与える.戦略決定に影響を与える要因としてその「形成」は実行の確約の鍵になる組織メンバーとのある「共通理解」を得ることが必要である.また,共通目標達成するために組織間の協力をいかに確保するかである複数組織の協力・共生のルールづくりや仕組みづくりが重要である.
いかにしたら戦略的コミットメントー(実行の確約) - つまり有効性と信頼性 -をつくりだせるのかは,全ての戦略行動に共通の問題である.
ゲーム理論と同様に,コミットメント理論は意思決定の一つの方法論と示すことを試みたといえるだろう.いずれにせよ,複数の当事者が存在し,それぞれの行動が互に影響を及ぼしあう状況において,それぞれの効用に基づいて各人の行動を予測し,意思決定を導く戦略は,意思決定の各参加者が同じ思考方法を理解し,同じ思考体系を採用することが不可欠である.状況があまりに複雑,不確実であったり,価値観に本質的な違いが存在する場合など,ゲーム理論では解決できない問題もある.しかし,意思決定の方法における合流 (confluence)への一つの有力な流れへと位置づけ,他の方法の知恵と重ねることでよりよい意思決定への道を開くことが可能になっていくだろう.

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