オーソリティーについて
Herbert A.Simon (1976)によれば,「オーソリティー」とは,他人の行為を左右する意思決定をする能力(power) として定義された.この意味での権威・権力を他の種類の影響力から区別する特徴は,上役の行動パターン - 命令および選択の基準として他人によってその命令が受容されるだろうとの期待の両方が含まれている.部下の行動パターンは - 代替的諸行動のどれを選ぶかを彼自身の能力できめることをやめ,選択の基礎として命令あるいは信号を受容するというフォーマルな基準を用いる.
組織が個人に与える影響は,組織によって個人の意思決定が決められてしまうことを意味するのではなく,その個人の意思決定の基礎となっているいくつかの諸前提が,組織によって,個人に対して決められることと,解釈されるのである.
組織された人間の集団の行動において,行動の統一性と調整があまりにも顕著に見られる事が多く,それで多くの社会思想家たちは個人と集団とは相似の関係にあると考えようになった.この調整を可能にしているメカニズムは,簡単には知覚されない.個人の場合には,完全に知覚するいことのできる神経繊維の構造があり,それによって,身体のどの部分からの刺激でも他の部分へと伝えることができるし,これらの刺激を中枢細胞でたくわえ,かつ変形することもできる.社会的集団の場合には,基礎にあるメカニズムの手がかりを探究する際,解剖の対象となる生理学的な構造は存在していない.
このような調整が成就される方法については,まず,行為の計画がつくられ,つぎに,この計画が集団のめんばーに伝達される.この過程の最後の段階は,メンバーによるこの計画の受容である.オーソリティーは,この受容において中心的役割を果たすのである.個人の行動がその集団の他のメンバーの行動を予期し,それに合わせ個人の行動がとられるとき,調整が達成される.そこに含まれている心理的な過程は,完全に熟慮たとか,意識的なものであることはめったにない.調整がもたらされる行動のほとんどは,その大部分が習慣的かあるいは反射的である.組織においては,彼は,伝達された他人の意思決定によって,彼自身の選択が導かれることを許容し,これらの前提の利害得失について彼自身の側でなんら考えることはしない,という一般的な規則を彼自身でつくっている.
[権威・権力の範疇と限界]
二人の間に意見の不一致があり,この不一致が議論,説得,あるいはその他の確信(conviction)させるための手段を用いても解決できない場合は,その二人のどちらかの「オーソリティー」によって決定されねばならない.しかし,あまりにもしばしば,この不一致という要素が,この服従という状況において他の要素を無視して強調されすぎている.
上役と部下の関係は,広範な人間行為を特徴づけている役割引受けの一つの例である.おそらく,このような役割をもつことのもっとも重要な基礎となっているのは,習慣である.すなわち,きわめて多くの行為は,その状況のもとではそれが社会的に「期待された」行為である.ある特定の行為が習慣によって生じたのはなぜかの理由を明らかにするためには,当該の社会の社会的な歴史を研究することが必要とされるであろう.
社会における「制度」は,ある環境のもとで,特定の個人が他人の関係で演ずる役割を明確に示した規則であるとみなすことができよう.その場合に果たしうる役割や行動の範囲は,劇的な発明のときに人が示す独創性と同じように,非常に広いものである. 多くの社会において,社会的に定められている役割の一つは,「従業員」の役割である.その役割に固有の内容 - 期待される服従の程度 - は,社会状況とともに変化するであろう.
「部下」の役割のもっともいちじるしい特質は,その役割が,一定の範囲内では彼は,彼の上役が彼に与えた意思決定を進んで受容するという,受容圏が確立されていることである.それゆえ彼の選択はこの受容圏の範囲内では,つねに彼の上役によって決められる.そして上役と部下の関係は,この範囲内においてのみ成立する.この範囲の大きさは,きわめて多くの環境の影響を受ける.(慣行も制裁もともに極めて厳しい軍隊では,受諾圏は最も広いであろう).
[権威・権力の機能]
1 責任
権威・権力が責任を強制するために用いられる場合には,制裁は,おそらくその過程において重要な役割を果たすであろう.
2 専門技術
権威・権力のきわめて重要な機能は,行動の合理性と効率性をもつ意思決定を確保することである.
3 調整
専門技術は,よい意思決定の採用を意味している.調整は,その集団のすべてのメンバーによる同じ意思決定の採用を意図している.より正確にいえば,設定されている目的を達成するため,協力して互いに一貫した意思決定をすることを意図している.
管理において,矛盾する権力関係を回避することは,ときに重要な問題となる.唯一の論点は,命令の統一性が唯一の,あるいは最良の解決であるかどうかである.ある組織では,命令の継続性が破れられるのを防ぐために,権威・権力のハイアラーキーと区域分けが階級制度によって補強されることが,当然に必要となろう.そして,意思決定の本質的側面は,選択の手続でなく,むしろ選択の基準であろう.
組織が個人に与える影響は,組織によって個人の意思決定が決められてしまうことを意味するのではなく,その個人の意思決定の基礎となっているいくつかの諸前提が,組織によって,個人に対して決められることと,解釈されるのである.
組織された人間の集団の行動において,行動の統一性と調整があまりにも顕著に見られる事が多く,それで多くの社会思想家たちは個人と集団とは相似の関係にあると考えようになった.この調整を可能にしているメカニズムは,簡単には知覚されない.個人の場合には,完全に知覚するいことのできる神経繊維の構造があり,それによって,身体のどの部分からの刺激でも他の部分へと伝えることができるし,これらの刺激を中枢細胞でたくわえ,かつ変形することもできる.社会的集団の場合には,基礎にあるメカニズムの手がかりを探究する際,解剖の対象となる生理学的な構造は存在していない.
このような調整が成就される方法については,まず,行為の計画がつくられ,つぎに,この計画が集団のめんばーに伝達される.この過程の最後の段階は,メンバーによるこの計画の受容である.オーソリティーは,この受容において中心的役割を果たすのである.個人の行動がその集団の他のメンバーの行動を予期し,それに合わせ個人の行動がとられるとき,調整が達成される.そこに含まれている心理的な過程は,完全に熟慮たとか,意識的なものであることはめったにない.調整がもたらされる行動のほとんどは,その大部分が習慣的かあるいは反射的である.組織においては,彼は,伝達された他人の意思決定によって,彼自身の選択が導かれることを許容し,これらの前提の利害得失について彼自身の側でなんら考えることはしない,という一般的な規則を彼自身でつくっている.
[権威・権力の範疇と限界]
二人の間に意見の不一致があり,この不一致が議論,説得,あるいはその他の確信(conviction)させるための手段を用いても解決できない場合は,その二人のどちらかの「オーソリティー」によって決定されねばならない.しかし,あまりにもしばしば,この不一致という要素が,この服従という状況において他の要素を無視して強調されすぎている.
上役と部下の関係は,広範な人間行為を特徴づけている役割引受けの一つの例である.おそらく,このような役割をもつことのもっとも重要な基礎となっているのは,習慣である.すなわち,きわめて多くの行為は,その状況のもとではそれが社会的に「期待された」行為である.ある特定の行為が習慣によって生じたのはなぜかの理由を明らかにするためには,当該の社会の社会的な歴史を研究することが必要とされるであろう.
社会における「制度」は,ある環境のもとで,特定の個人が他人の関係で演ずる役割を明確に示した規則であるとみなすことができよう.その場合に果たしうる役割や行動の範囲は,劇的な発明のときに人が示す独創性と同じように,非常に広いものである. 多くの社会において,社会的に定められている役割の一つは,「従業員」の役割である.その役割に固有の内容 - 期待される服従の程度 - は,社会状況とともに変化するであろう.
「部下」の役割のもっともいちじるしい特質は,その役割が,一定の範囲内では彼は,彼の上役が彼に与えた意思決定を進んで受容するという,受容圏が確立されていることである.それゆえ彼の選択はこの受容圏の範囲内では,つねに彼の上役によって決められる.そして上役と部下の関係は,この範囲内においてのみ成立する.この範囲の大きさは,きわめて多くの環境の影響を受ける.(慣行も制裁もともに極めて厳しい軍隊では,受諾圏は最も広いであろう).
[権威・権力の機能]
1 責任
権威・権力が責任を強制するために用いられる場合には,制裁は,おそらくその過程において重要な役割を果たすであろう.
2 専門技術
権威・権力のきわめて重要な機能は,行動の合理性と効率性をもつ意思決定を確保することである.
3 調整
専門技術は,よい意思決定の採用を意味している.調整は,その集団のすべてのメンバーによる同じ意思決定の採用を意図している.より正確にいえば,設定されている目的を達成するため,協力して互いに一貫した意思決定をすることを意図している.
管理において,矛盾する権力関係を回避することは,ときに重要な問題となる.唯一の論点は,命令の統一性が唯一の,あるいは最良の解決であるかどうかである.ある組織では,命令の継続性が破れられるのを防ぐために,権威・権力のハイアラーキーと区域分けが階級制度によって補強されることが,当然に必要となろう.そして,意思決定の本質的側面は,選択の手続でなく,むしろ選択の基準であろう.
コメント