組織と文化における一考察

 組織の存続は環境が不断に変動するなかで,複雑な性格の均衡をいかに維持するかにかかっている.このために組織は外的環境の中での生き残りと適応,生き残り,適応し続ける能力を確保するための内部プロセスの統合が必要である.ところが,これらの過程についての研究は,時には相互に矛盾し,時には観察される行動と一致しない.私たちは実際の行動のかなりの部分は,説明されないままにあるという気持ちが残る.
 組織文化はなぜ,そして,どのように人々の行動に影響を与え,影響を受けるかという問題意識から組織行動における経営戦略と組織文化の関連を分析し,組織有効性と戦略評価に対してもつ意味を見出そうと試みているのである.
「組織」という言葉は何を意味するのだろうか?Schein(1980) 組織はまず人々の頭の中で生まれる.組織における人間問題は,一人または複数の人が自分たちの頭の中に生まれたある考えを,どのように二人以上の人々の活動の青写真に転換するかという過程である.また,組織を構成する個人と組織自体が変わり,成長し,発展するにつれ変わることを常に心にとめておくことが必要である.
Louis(1983) 組織というものを時間的,空間的に定義するのは容易でない.組織は多くの環境と常に相互に影響するオープン・システム(注1)であり,多くのサブ・グループ,職業単位,階級,地域的に分散した部分から成り立ている.こうしたグループが経験を共有した歴史をもつ安定した単位として定義できれば,彼ら特有の文化を作り上げるのである.
「文化」という言葉は,組織自体や周囲の環境をどうみるか - つまり,ある任意の人々の集まりが,外部的・内部的問題を解決する過程でかなりの数の重要な経験を共有したと証明できれば,このような共通の経験によって,やがて,周囲の世界やそこでの自らの位置について,彼らは共有の見解をもつようになるとみなすことができる.文化とは,この意味で,グループの経験によって習得された産物であり,したがって,それなりの歴史をもった定義可能なグループが存在するところだけに見いだされるものなのである.(Schein,1985) 組織の研究,あるいは組織との関連における人々の行動の研究をすすめようとすれば,どうしても「個人とは何か」「人間とは何を意味するのか」「人はどの程度まで選択力や自由意思をもつものか」というような疑問に直面せざるをえないことがわかる.すなわち人間の行動についてなにかを語る場には,暗黙のうちにその問題に答えていることなるし,さらに重要なことは,あらゆる種類の人々,とくに指導者や管理者の行動は,たとえ無意識にせよ,その問題に関する基本的な前提や態度にもとづいている.
組織は,それぞれの社会の生産形態と社会思潮に適応して作られる.そしてそれがまた社会の形態や文明の態様を定めていくとも言える.このような組織の機能を論ずる場合に,組織体,あるいは組織の末端部分,調整によって可能となる努力の統合,集団を構成する人間が問題とされるようになると,個人はその状況では重要性を失い,非個性的な性格をもつ他の何ものかが重要なものとみなされる.人類は長いあいだ望んでいた自由を手に入れて,しかも生活の意味を見失うとは,なんたる当惑であろう
変化する環境の中で,無数の意思決定の主観的側面に一貫性を与え,協働に必要な強い凝集力を産み出す経営責任は,主としてリーダーの外部から生ずる態度,理想,希望を反映しつつ,人々の意思を結合して,人々の直接目的やその時代を越える目的をはたさせよう自らをかりたてるリーダーの能力である.これらの目的が低く,時間が短いときでさえも,人々の一時的な努力は,人々の助をかりない一人の人を超越する,生命力のある組織の一部になる.しかし,これらの目的が高くて,多くの世代の多数の人々の意思が結合されるときには,組織は永続することとなる.かように,組織は,協働する人々の間では,目に見えるものが,目に見えないものによって動かされる.無から,人々の目的を形成する精神が生ずるのである.(C.I.Barnard,1938)
わたしは文化的背景やその動向から科学を見る興味がある.構造主義的な考え方では,私たちが認識している世界及び人類が積み重ねて来た知識は,私たちの思考や認知パターンと密接な関係があるとする.それによって人間は物を分類して処理するというものである.いわゆる科学や文化も多かれ少なかれこうした思考パターンの影響を受けて,しかも影響を与えるのである.
科学の機能は過去の現象,出来事,状況を説明することである.その目的は,特定の出来事,結果,あるいは状況を作り出すことではなく,われわれが知識と呼ぶ説明を産み出すことである.技術の体系であるのが科学の目的ではなかった.しかしながら,技術との関連における科学の重要性は,きわめて明らかである.協働体系および組織問題に完全に科学的な接近をすれば,管理技術に有益な用具を提供することに重要である.
研究方法について,自然科学は方法は比較的はっきりしており,完全に数値化できるのでイージーサイエンスという人もいる.社会科学は例外が多く難しいので,心理学や社会学もいくつもの派に分れ,学説もいろいろあり,本当の法則が何かもわかっていないかもしれない.そして法則があるものもあれば,ないものもあろう.困難なのは社会科学者の知恵が足りないからではなく,もともと難しいものであるからと思う.

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