政治文化と組織化のプロセス
以上のような分析は,Almond,G.A.,& Verba,S.(1963)の「政治システム」モデルを借用するのが便利である.
政治システムは「社会における正当で強制的な秩序維持,または秩序変容的システム」(Almond,G.A.& Coleman,J.S.,1960)であり,「権威的な決定策成システム」(Easton,D.,1953)である. この体系の能力を「権力」と呼んでもよいが,権力をそう定義することは,権力の零和観念を拒否することを含んでいる.つまり,権力は分割配分されるべき固定量のものではなく,その入力要素の量と質に,また入力を出力に変換させるメカニズムの性能に依存して,拡大したり縮小したりするような政治システムの能力を意味する.しかもこの能力の拡大は,単に量的増大を意味するにとどまらず,Alomnd が,資源抽出能力,関係規制能力,配分能力,象徴操作能力,応答能力 (responsiveness)と識別したような質的に異なった新しい能力が付加して発展することを意味する.
政治過程や政治行動にたいする政治文化の影響を明らかにするためには,政治システムへの入力要素(支持・批判・要求)の質の側面を手がかりにするのがよい.これが現実において多次元的な分裂(対立)構図をなしている混合パターンであることが,政治の変動予測に貢献する.
多数の人間が共存して政治体を構成している限り,社会に利害の対抗,亀裂が存在するのは状態であり,この亀裂が紛争として顕在化し,処理を要求することになるのも必然である.この意味で,社会は常に何らかの形で分裂から合意(consensus)を生みだし,社会のエントロピー低減を図る方策をもたなければならない.エントロピー低減策のありうべき代替案(alternative)のうち,価値および利害の差異と対立を顕在化させ,その前提の上に「合意」を生みだす戦略が「多数決原理」であり,それらをむしろ潜在化させ,「合意」の状況(あるいは雰囲気)の中へ差異と対立を融解させる戦略が「全員一致原則」である.
組織を進行するプロセス(環境変化,目的変更と協働過程の適応)の問題の重要性を最初に指摘したのはBarnardである.その後, Weick,K.E.(1969) は組織を現象学的立場から観察し,プロセスとしての組織観に理論的基礎を与えた.
プロセスとしての組織観とともに,変化が日常的な状況では,「意味決定」(sence making) が日常的な問題として重要になってくる.
このように,環境は必ずある仕方で理解されなければならないが,環境が安定しているか,安定と変化か不定期的に訪れる状況では,意味決定は必ずしも日常的な問題ではない.
ところで,組織行動は,それ自体が環境に変化をもたらし,事前にその変化を完全に予測することは不可能であるから,環境理解をあらかじめ固定化することもできない.組織メンバーは,自分たちが適応すべき環境を自ら作り出しているのである.このような相対的関係において自らの行動や環境の意味を理解するためには,すでに完了した行動を事後的・遡及的(retrospective)に解釈することが必要である.こうして,多義的あるいは意味豊かな状況では,一方でセンサーを通じてもたらされる「現実世界」についての情報と,他方で長期記憶に大量に蓄えられ,再認・連想によって検索される.現実世界に関する過去の記憶情報によって,人々の行為は影響をうける.
組織化プロセスの基本単位は,相互作用をもつ人々の諸行為,すなわち連結行動(interlocked behavior)である.絶えず変化する環境で,起こりつつある事象の意味を理解するためには,人々は繰り返し生起しては終結する反復的・安定的事象を確立しなければならない.しかし,人々の行為が互いに相互依存的な社会ては,他者の行動を考慮にいれずに,個人の努力だけで,このような反復的事象を作り出すことは不可能である.このような状況で,なんらかの終結を作り出す可能性が最も高いのは,「Bにとって価値があるAの行動で,次にAの利益になるような行動をBに起こさせるような,そいったAの行動である.このような互酬的関係(reciprocity)が成立すれば,AとBの行為の間で「二重の相互作用」が繰り返し反復っされ,「連結行動」が形成されることになる.
ここで重要なことは,共通目標は組織化の前提として必ずしも必要ではないということである.むしろ「共通目標」らしきものは連結行動がくりかえされる過程で,その結果を事後に遡及的に解釈することによってわかってくる.そもそも組織は,異なる利害や能力をもつ人々が,個人ではできない多様な目的を達成するために,協働という手段を選択するときに創発的に形成されるのである.
組織化の理論にしたがえば,組織目標や戦略についての既存の概念は,修正される必要がある.つまり組織における共有された組織目標は,未来の行動のガイドラインというよりも,過去においてなされてきた諸行為を遡及的に解釈し,正当化・意味づけされたものとして最もよく理解できる. 換言すれば,環境を創出する時に既存の知識を有効と考え,その意味を解釈する時に新しい見方で考えるという態度,もしくはその逆の因果関係を両立する態度が重要なのである(わかっている意味をわからなくする機能や主客転倒による意味創造は注意すべきである). こうした逆説的な(paradoxical)戦略は, つまり,ある程度の無秩序や多義性を受容しておくことは,きわめて重要な戦略なのである (R.Quinn & K.Cameron,1988).
政治システムは「社会における正当で強制的な秩序維持,または秩序変容的システム」(Almond,G.A.& Coleman,J.S.,1960)であり,「権威的な決定策成システム」(Easton,D.,1953)である. この体系の能力を「権力」と呼んでもよいが,権力をそう定義することは,権力の零和観念を拒否することを含んでいる.つまり,権力は分割配分されるべき固定量のものではなく,その入力要素の量と質に,また入力を出力に変換させるメカニズムの性能に依存して,拡大したり縮小したりするような政治システムの能力を意味する.しかもこの能力の拡大は,単に量的増大を意味するにとどまらず,Alomnd が,資源抽出能力,関係規制能力,配分能力,象徴操作能力,応答能力 (responsiveness)と識別したような質的に異なった新しい能力が付加して発展することを意味する.
政治過程や政治行動にたいする政治文化の影響を明らかにするためには,政治システムへの入力要素(支持・批判・要求)の質の側面を手がかりにするのがよい.これが現実において多次元的な分裂(対立)構図をなしている混合パターンであることが,政治の変動予測に貢献する.
多数の人間が共存して政治体を構成している限り,社会に利害の対抗,亀裂が存在するのは状態であり,この亀裂が紛争として顕在化し,処理を要求することになるのも必然である.この意味で,社会は常に何らかの形で分裂から合意(consensus)を生みだし,社会のエントロピー低減を図る方策をもたなければならない.エントロピー低減策のありうべき代替案(alternative)のうち,価値および利害の差異と対立を顕在化させ,その前提の上に「合意」を生みだす戦略が「多数決原理」であり,それらをむしろ潜在化させ,「合意」の状況(あるいは雰囲気)の中へ差異と対立を融解させる戦略が「全員一致原則」である.
組織を進行するプロセス(環境変化,目的変更と協働過程の適応)の問題の重要性を最初に指摘したのはBarnardである.その後, Weick,K.E.(1969) は組織を現象学的立場から観察し,プロセスとしての組織観に理論的基礎を与えた.
プロセスとしての組織観とともに,変化が日常的な状況では,「意味決定」(sence making) が日常的な問題として重要になってくる.
このように,環境は必ずある仕方で理解されなければならないが,環境が安定しているか,安定と変化か不定期的に訪れる状況では,意味決定は必ずしも日常的な問題ではない.
ところで,組織行動は,それ自体が環境に変化をもたらし,事前にその変化を完全に予測することは不可能であるから,環境理解をあらかじめ固定化することもできない.組織メンバーは,自分たちが適応すべき環境を自ら作り出しているのである.このような相対的関係において自らの行動や環境の意味を理解するためには,すでに完了した行動を事後的・遡及的(retrospective)に解釈することが必要である.こうして,多義的あるいは意味豊かな状況では,一方でセンサーを通じてもたらされる「現実世界」についての情報と,他方で長期記憶に大量に蓄えられ,再認・連想によって検索される.現実世界に関する過去の記憶情報によって,人々の行為は影響をうける.
組織化プロセスの基本単位は,相互作用をもつ人々の諸行為,すなわち連結行動(interlocked behavior)である.絶えず変化する環境で,起こりつつある事象の意味を理解するためには,人々は繰り返し生起しては終結する反復的・安定的事象を確立しなければならない.しかし,人々の行為が互いに相互依存的な社会ては,他者の行動を考慮にいれずに,個人の努力だけで,このような反復的事象を作り出すことは不可能である.このような状況で,なんらかの終結を作り出す可能性が最も高いのは,「Bにとって価値があるAの行動で,次にAの利益になるような行動をBに起こさせるような,そいったAの行動である.このような互酬的関係(reciprocity)が成立すれば,AとBの行為の間で「二重の相互作用」が繰り返し反復っされ,「連結行動」が形成されることになる.
ここで重要なことは,共通目標は組織化の前提として必ずしも必要ではないということである.むしろ「共通目標」らしきものは連結行動がくりかえされる過程で,その結果を事後に遡及的に解釈することによってわかってくる.そもそも組織は,異なる利害や能力をもつ人々が,個人ではできない多様な目的を達成するために,協働という手段を選択するときに創発的に形成されるのである.
組織化の理論にしたがえば,組織目標や戦略についての既存の概念は,修正される必要がある.つまり組織における共有された組織目標は,未来の行動のガイドラインというよりも,過去においてなされてきた諸行為を遡及的に解釈し,正当化・意味づけされたものとして最もよく理解できる. 換言すれば,環境を創出する時に既存の知識を有効と考え,その意味を解釈する時に新しい見方で考えるという態度,もしくはその逆の因果関係を両立する態度が重要なのである(わかっている意味をわからなくする機能や主客転倒による意味創造は注意すべきである). こうした逆説的な(paradoxical)戦略は, つまり,ある程度の無秩序や多義性を受容しておくことは,きわめて重要な戦略なのである (R.Quinn & K.Cameron,1988).
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