制度化

組織や制度は,さまざまな個人または集団の目標を実現するために,他の人たちまた集団との交換の過程を引き受ける異なった人々および集団の間の多様な反応と相互作用を通じて形成されるのである.
 こういう交換に従事する個人または集団は,でたらめに分布しているのではない.こういう交換は,構造的に異なった位置の人たちの間でとり行われる.これらの位置自体は,「制度的交換」の過程の結果である.また,この過程の中での個人の創造性と相互作用の分析と,制度形成の象徴的=規範的,体系的,権力的側面の分析との結合の重要性を強調している.
 制度化の過程は,制度が,実効性のある制度として自立し,権力行使の源泉として,また,正当性を付与するためのイデオロギーに転化していく過程でもある.それは各個人のアイデンティティは,自らの経験・状況・制度に対する一貫しかつ安定したイメージに支えられている.そして,それが組織全体の統一的な認知構造を提供するという意味で,組織の安定化に貢献する.
 しかし一方で,制度化は組織全体の認知構造を歪んだものとしてしまい,組織の客観的状況の正確な判断を困難にする危険がある.そればかりか自らの存続をはかるために,意図的に自らにとって好都合な不確実性を創出を行い,組織のおかれている現実(reality)そのものを,自らの手で人為的に形成することになる(J.Pfeffer & G.R.Salanick,1978).
以上,組織変動のダイナミックな側面をみてきたわけであるが,現存する制度はそれぞれの利害状況,既得権益の構造体を現したものであり,新しい戦略展開が,そうした既得権のネットワークに抵触するかないしは変更を迫る場合,状況は一挙に政治問題化する.
 Riesman,D.(1961)は,状況的強制力の存在を拒否権行使集団への権力の拡散による各単位間の反応の類似性に求めた.それは集団成員の大部分の人々が共有している心理的特性であるが,さまざまの社会諸集団に共通の経験からうまれた制度や伝統,規範が個人を拘束したり心理的に負担をかけるのを,個人が自己のもつ欲求性向と矛盾しない形で解決するメカニズムであり,したがって,文化的規制が心理的次元に表出されたものなのである.いいかえるなら,Fromm.E.(1941)がいう社会心理学的要因は文化的規制に影響された性格をもつのである.この意味から,権力構造の分析のもう一つの介在条件として,文化的要因の作用が注目される.
政治文化は意思決定の様態やスタイルに最も鮮明にその姿を顕わすことである.多数の人間が共存して政治体を構成している限り,社会に利害の対抗,亀裂が存在するのは状態であり,この亀裂が紛争として顕在化し,処理を要求することになるのも必然である.この意味で,社会は常に何らかの形で分裂から合意(consensus)を生みだし,社会のエントロピー(注 8-1)低減を図る方策をもたなければならない.エントロピー低減策のありうべき代替案(alternative)のうち,価値および利害の差異と対立を顕在化させ,その前提の上に「合意」を生みだす戦略が「多数決原理」であり,それらをむしろ潜在化させ,「合意」の状況(あるいは雰囲気)の中へ差異と対立を融解させる戦略が「全員一致原則」である.
文化,政治的構造,戦略との関係において政治策略は文化を創造し,文化は特定の政治行動のタイプを正当化するのに役立つ,文化と政治との関係が政治的側面を見出すことができる.(Riley,P.,ASQ,1983,3,414-37)
戦略決定は,外部圧力(特に,重要な外部勢力)に対する反応が戦略決定への制約となる.そして,内部の政治的構造(power)は外部の圧力を反映している.組織文化とパワーと相互関連される(C.R.Schwenk,1988).
ゲーム理論と同様に,コミットメント理論は意思決定の一つの方法論と示すことを試みたといえるだろう.いずれにせよ,複数の当事者が存在し,それぞれの行動が互に影響を及ぼしあう状況において,それぞれの効用に基づいて各人の行動を予測し,意思決定を導く戦略は,意思決定の各参加者が同じ思考方法を理解し,同じ思考体系を採用することが不可欠である.状況があまりに複雑,不確実であったり,価値観に本質的な違いが存在する場合など,ゲーム理論では解決できない問題もある.しかし,意思決定の方法における合流 (confluence)への一つの有力な流れへと位置づけ,他の方法の知恵と重ねることでよりよい意思決定への道を開くことが可能になっていくだろう.

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