組織文化の研究の考察

 組織文化の研究は,Pettigrew(1979) の著作を嚆矢として80年代末から,しだいに新たな研究領域として形成されつつある. 組織論者および実務家はパラダイム交替(paradigmatic-shift)の観点か,または道具価値(instrumental value)のパスペクティブか,組織文化の研究モデルを構築している.パラダイム交替論者の Smircich(1983,1985)は組織文化をメタファーと見ている(Organizational culture as a etaphor).彼は,メタファーの虚幻(falsehood)的想像空間を運用して,組織分析上の言語を再構築すべきだと指摘した.組織を哲学者として (Organization as a philosopher),機械的,有機的なメタファーが分析できない組織現象,例えば,構造化無秩序 (organized anarchy),組織政治 (organiza-tional politics),曖昧と変化(ambiguity and change)などを解読できればと期待している(Frost,etal,1991;Martin,1992;Morgan,1980,1986,
1989). 道具価値論者, Saffold III(1988)は,組織文化を不確定要素(organizational as variable)とみなし,組織プロセスの側面から,組織文化の効用を探究する.それによって組織効果の尺度的な次元や枠組をも提供できると指摘している.(表 1-1 )
 上述のメタ理論構築上の分岐は,時間と共に埋め合わせるか却ってだんだん分離(divergence)現象が見えてきた.組織文化論者Martin(1991,
1992)は,このような文化研究の多元的分岐を三つに分類した.(表 1-2 )
 組織文化の研究は,理論上のコンセンサス(theoretical consensus)が欠くために,実証内容の採択に限らず,必要であるべき価値の選択までパラドックスに遭うのである.このような状況では有効な相関知識を蓄積することができないだけではなく,理論間の対話さえできないことになった.(Frost,etal,1991;Martin,1992)
 このようなコンテクストゆえに,さまざまな概念上の混乱がみられた.
そこで,組織メンバーの行動や理解の認知プロセスを支配している知識について,その全体像を明らかにしたのは,E.H.Schein である.
Schein(1985) によれば,組織文化は「ある特定のグループが外部への適応や内部統合の問題に対処する際に学習した,グループ自身によって,創られ,発見され,または,発展させられた基本的仮定のパターン(a pattern of basic assumptions) - それはよく機能して有効と認められ,したがって,新しいメンバーに,そうした問題に関しての知覚,思考,感覚の正しい方法として教え込まれる」と定義された.
 以上のような状況を認識しながら,組織文化の研究はパズルの解決(puzzle solving)よりは,理論ジャングルの中での奮闘とも言えよう.

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