環境、組織と戦略の「適合」
環境,組織と戦略の「適合」とはどのようなものかという問題は,経営学における新しい問題の1つであり,この問題に解答を与える十分なデータと理論が整備されているわけではない.しかし,先駆的研究を通じてこの問題に答える理論的な手掛かりはえられる.例えば,Mintzberg,H.(1973,1979)による環境適応パターンの類型化,Mlies,R.E.&Snow,C.C.(1978)の適応パターンの類型化 ,Deel,T.E.&Kenemy,A.A.(1982)による組織文化の分類,また,加護野 他 (1983)日米大企業の戦略や組織の定量的・定性的分析から抽出されたVHSBの4類型は,これまでの類型分析とも合致する. われわれは, (1) より一般性をもつ類型を求めている.(2) 微調整に重点をおいて環境変化への適応をはかるよりもむしろ組織の発展段階と関連した組織変動 (organization change),組織の計画的変化に重点がおかれる.(3) 組織が現状から望ましい状態へ移行していくプロセスの解明とそのための手法が重視されるべきだと考えられている.
[表 13-1] はこの分類に基づいて,価値競合的組織文化と組織の有効性の可能な一致(congruence)を示し,環境状況と経営戦略との動態的関連性を具体化しようとする試みである(注13-1)..
表 13-1 経営戦略と組織有効性モデルの関連性
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│外部環境の状況│高い不確実性│.低い不確実性│低い不確実性│高い不確実性
│.............................│高い緊迫状態│.高い緊迫状態│低い緊迫状態│低い緊迫状態 ├───────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│....文化類型..... │成長・適応的..│..理性主導的 │..階層制約的 │..コンセンサス
│................ │...........文化. │............文化 │............文化 │.....的文化
├───────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│....組織形態.... │臨時的組合せ│..一般企業 │.....官僚体制 │......派閥集団
│................. │................. │............. │.............. │................
├───────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│.......採用された │オープン・システム │.....理性目標 │.....内部過程 │..人間関係
│......組織モデル │.....モデル │.......モデル │........モデル │.....モデル
├───────┼──────┼──────┼──────┼──────┤
│...対応的な戦略 │直感で行動す │類型を分析し │現行行動の維│.相互作用によ
│..................... │る,漸進的な │,過去の成功│.持,状況を観│って不確実性
│..................... │学習と調整・ 経験や戦略を│察する........│.を減らす.
│..................... │適応...... │...選択する. │................. │...............
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整合的理論は最も理想的には個人,集団,組織,環境のすべてのレベルにおよぶ組織現象を統一的にか,あるいは現実的にはなるべく広い範囲にわたって準統一的に説明できる概念体系とその操作性をビルト・インしている理論である(注 13-2).われわれは組織文化の理論構築が現実にどこまで可能なのか,また可能であるとすれば組織現象を統一的説明できればと探索した.
[13-1]
歴史が進んで様々な文明の形態を時間的直列配置から空間的並列配置に替えた変化は必然的でも連続的でもない.進化は必ずしも同一方向に起こらない.方向の変化も伴い.従って,多様に変化する環境内の組織体を対象にし,時間の経過ともなう単線的進化の仮説は連続的系列に並べるのは困難なのである.要は,組織の変動は単線的進化の連続的諸段階ではなく1つの現実の交替「面」を示すものとされている.
[13-2]
組織現象の特定理論は特定の分析レベルを中心とした理論であり,それは分析レベルには最適な意味のある概念と方法論が存在するので,反証可能性の低い全体主義の理論にならないように,さりとて断片的な検証研究におちいらないような領域で現実的な理論構築を行なうべきであるというR.K.MEton (1957)の中範囲理論に一致する. しかしながら,MEtonも特定理論の積み上げのなかから共有性を整理統合した理論構築の可能性を示唆している.
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